懐かしいぬくもり
ウチの子たちは3人ともぬいぐるみが好きです。
娘はもちろん、高校生の長男も中学生の次男も。
私としては全然変だとは思わないのですが。
ただ、もう卒業してもいい頃なのでは?とは感じるけど、今だにぬいぐるみと一緒に寝たりしていて。
ギリギリの年頃まで全員同じ部屋で寝ていたから、インナーチャイルドの寂しさを埋めている訳でもなさそうだし。
何となく考えていて、思い当たりました。
いぬです。
実は末っ子くんがオムツを付けていた頃から
保護いぬの預かりボランティアをやっていました。
飼育放棄されたり。
パピーミルと呼ばれる悪質なブリーダーの崩壊でレスキューされたり。
保健所から殺処分を免れて引き出されてきたり。
そんな子たちが新しい家庭に行くまでの間、心身ともにケアするのが預かりボランティアの役目です。
我が家から何頭も新しい家庭へと送り出して行きました。
最初、来た時は心を閉ざしているコも、時間の経過と共に甘えてきてくれるようになります。
その時に3人の子どもたちがいつも大活躍してくれました。
私が構ってあげられない時間帯は子どもたちにピッタリとくっついて甘えている預かりっコたちがほとんどでした。
どんな預かりのいぬが来ても、そのコの性格を説明してあげると子どもたちはそれを理解し、無理強いすることなく上手に距離を縮めていって、いつの間にか仲良しになります。
3人といぬが ”ひっつきもっつき” しているのが我が家のいつもの光景でした。
その中で、3代目の預かりっコだけ我が家の家族として迎え入れました。
推定10歳を越えたマルチーズMIXだったのですが、来た当初はお腹にSサイズみかん程のしこりをぶら下げていました。治療してもらえないまま放置された腸ヘルニアでした。
長期に渡ってシャンプーされていないため、毛がほぼ抜け落ちて皮膚から出る油分で全身ベトベトになった状態で棄てられたコでした。
手術でしこりを切除し、身体のケアをしながら人間への信頼を取り戻してもらって、警戒して唸ることも少なくなりました。
毛も生えそろって、見違える程に可愛らしくなっていき、これから新しい家族の中で幸せを味わうんだという時に、重い心臓病が発覚しました。
すでにかなり進行し肺に水が溜まっていて、薬の力で心臓を動かすしかない状態まできていました。
いつ止まってもおかしくない心臓だと。
なんでこのコがこんなにたくさん辛い目に合わないといけないんだろうっていう悔しさとか、切なさとか、もう離したくないっていう込み上げる愛情とか、このコの最期を見守る責任と権利を私に欲しいっていう覚悟とか。
声をあげて泣きながら思いを巡らせました。
その日は私の誕生日で。
もうこれはご縁でしかないなって思ったので、保護ボランティア団体の代表にすぐ電話して我が家に譲渡してほしいとお願いしました。
その後も預かりボランティアは続けていき、我が家は常に2~3頭のいぬたちと3人の子どもたちで、わっちゃわっちゃと楽しく賑やかでした。
いぬたちと子どもたちが重なり合ったザコ寝は当たり前の光景でした。
我が家に迎えたおじいちゃんワンコは日に日に赤ちゃんのように戻っていき、警戒して唸っていたのがウソみたいに超甘えん坊になりました。
加齢で耳が聞こえなくなって、私の姿を探して後追いしたり。
家に誰もいなくなると心細くて吠えてしまうけど、それだと心臓に負担になるから、どこに行くのも車に乗せていつも一緒にいました。
寝る前には必ずお気に入りのクマのぬいぐるみをちゅぱちゅぱ咥えながら私たちと一緒のお布団で寝ました。
「いつ止まってもおかしくない心臓」
そう宣告を受けた日から、4年の月日を私たち家族と過ごしてくれて、本当に可愛らしい姿でたくさん満たしてくれました。
そして最期は私の望み通りに、この腕の中で呼吸を終えてくれました。
預かりっコのタイミングがよかった事や、働きに出るのを決めた事で、預かりボランティアはその時に一区切りつけました。
我が家の子どもたちはもしかしたら、常に側にあったふわふわなぬくもりを求めて、ぬいぐるみを抱きしめて眠るのかも知れません。
本人たちに聞くと
「あー、確かにそうかも知れない。無意識だけど」
そう言っていました。
そうだよね。
どこか心があのふわふわを求めちゃうよね。
私もあの子に会いたいな…。
この時期になると懐かしく切なくなります。
もうすぐ命日です。
存在すべてで甘えてくれたあの子に、夢の中でもいいから会いたいな。